Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 高校入試は学力検査が滞りなく終わり、3日目は採点が行われる。
 教科ごとに教室が割り振られ、そこへ答案用紙が集められる。体育科や芸術科など5教科以外の教員たちも、5教科のどれかに割り振られて5教科の教員たちと一緒に採点することになる。
 みのりは地理の古庄、世界史の久我、同じ日本史の浜田や公民科の教員たちと社会科の採点にあたる。その採点要員の中に、あの江口もいた。


 江口とは、去年の暮れに口説かれてそれを断ってから、みのりは普通には接していたが、通常の仕事をする中では取り立てて接点もなかったので、個人的に口を利くことはほとんどなかった。

 普通に接したいと思ってはいても、やはり隣の席に座るのは躊躇してしまう。かと言って、何かと取沙汰される古庄の隣も遠慮したかったので、みのりはそっと浜田と久我の間に座った。


 記号で解答しているようなところは、教科外の教員でも採点可能なので、そこを任される。みのりたち専門の教員たちは、自分の教科に関する分野の記述問題を中心に採点することになる。

 たとえば、古庄は「イギリスは高緯度に位置しているのに気候が温暖なのはなぜか」ということを説明する問題を採点し、みのりは浜田とともに「参勤交代」について説明する問題を担当する。他にも、〝マニュファクチュア〟について説明する問題があったり、普段大学入試の問題に接しているみのりでも、中学生が解くにしては結構難しい問題だと思った。


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