Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「そりゃね。いきなり大人になるわけじゃないし。…大学入ってすぐだったから、18歳の時よ。ちょうど今の遼ちゃんと同じね。あの頃の私に比べたら、遼ちゃんは随分大人だと思うわ。」


 みのりもそう言いながら、遼太郎の視線に微笑んで応えた。


 あの頃のみのりは、今の遼太郎のように純粋だった。見るもの触れるものが、全てが新鮮に感じられた。

 ただ毎日が楽しくて、将来のことなどあまり考えることなく、目の前のことに一生懸命だった。大好きな日本史の研究に、好きになった人との恋に。

 とても拙かったし、失敗することもたくさんあった。だけど、一つ一つを積み上げて、人として成長していけた。大学での4年間で、みのりは子どもから大人になれた。

 みのりにとって大学とは、そういうかけがえのない大切な場所でもあった。


 遼太郎はまさにこれから、その場所へと一歩を踏み出す。

 新しい世界が彼の目の前に拓け、新たなことを学び、新しい関わりを持った時、遼太郎はどう成長し、どんなふうに変わっていくのだろう。


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