Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎の部屋に帰ってくると、あの修羅場が嘘だったみたいに綺麗に掃除されていた。陽菜に刺された後のことは、あまり覚えていないけれど、〝命にかかわる〟と言われたくらいだから相当に出血して、部屋を汚してしまっていたはずだ。
遼太郎はどんな気持ちで、この部屋の掃除をしたのだろう。遼太郎が怪我をしなかったことは不幸中の幸いだったけれど、あれだけの大事件が起きてしまって、遼太郎の心はどれだけの傷を負ってしまったのだろう。
みのり自身の怪我はそのうち治癒する。けれども、遼太郎の心の傷はどうやって癒してあげたらいいのだろう……。
コーヒーを淹れてくれた遼太郎がキッチンから戻ってくる。みのりは再び楽し気な笑顔になって、コーヒーを受け取った。
こんな狭い部屋の中で二人きりでいるのに、息苦しさなんて感じる暇もなく、とても穏やかで楽しい日曜日が過ぎていく。
「今日の夕食、どうしますか?」
夕方を前にして、遼太郎がみのりに問いかけた。
「そうだね。……私が作ってあげたいけど、できるかな?遼ちゃん、手伝ってくれる?」
「先生に作ってもらうなんて、とんでもない!俺が作ります。」
「え?!遼ちゃんが?作れるの?」