Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……遼ちゃん。また出かけるの……?」
しかし、みのりは眉を寄せて、途端に不安げな顔になった。
「いや、でも……。買い物行かないと、俺んち、ロクな食べ物ないし……。」
遼太郎も困惑した表情を浮かべながら、背負っていたリュックを下ろして、それを勉強机まで持っていく。
すると、遼太郎を追いかけるようにみのりがやってきて、その背中に追いすがるように顔を埋めた。
「……!」
遼太郎の息が止まった時には、その体にみのりの右腕が回されてギュッと力が込められていた。
「どこにも行かないで。ここにいて……!」
その震える声を聞いた瞬間、遼太郎の胸がキュッときしんだ。体中にみのりへの愛しさが駆け巡って、目眩がするようだった。
今すぐ体を翻して、みのりを抱きしめ直したくなったけれど、遼太郎は渾身の力でもって、その欲求を押しとどめた。一度堰を切ってしまうと、その行為に歯止めがかからないのは、遼太郎自身がいちばん分かっていた。
遼太郎はただ黙って、みのりの想いをそっと受け入れた。みのりの腕の力が弱まるのを待って向き直り、みのりの顔を覗き込んだ。
「……俺がいなくて、寂しかったですか?」
遼太郎の問いに、みのりは何も答えなかったけれど、遼太郎を見つめるその瞳にジワリと涙が浮かぶ。