Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「遼ちゃん、東京にはいつ行く?」
部活の練習が終わって、片づけをしている時に、二俣が不意に尋ねてきた。
例によって、みのりのことが立ち込めてきていた遼太郎の頭の中に、新しい風が吹き込んでくる。
思考からほとんど排除されていた東京での新生活のことを、いきなり目の前にぶら下げられた気がした。
「うん。3月の終わりの週末に、母さんと一緒に行くことにしてるよ。アパートとかも、姉ちゃんが探してくれてるから、あんまり急がなくてもいいんだ。」
「そうか。じゃ、ぎりぎりまでみのりちゃんの側にいられるってわけだな。」
相変わらず心の中を見透したような二俣の物言いに、遼太郎は肩をすくめた。
ぎりぎりまで側にいられても、その後は離れ離れになってしまう現実が待っている。
みのりの側を離れてしまう……。そのことが頭を過っただけで、遼太郎は言いようのない不安に襲われる。
花園予選の時、みのりが応援に来れない試合があった。その時のような感覚…。
ほぼこの1年間、勉強においても部活においても、遼太郎の生活の主軸はみのりと共にあった。みのりが側にいなくなって、独りになってしまうとどうしていいのか分からなくなってしまう。