Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎が論文に入り込んで、作業に没頭し始めたときのことだった。ゼミ室のドアが開き、誰かが入ってきた。けれども、遼太郎は集中していて、それに気がつかない。
その人物は無言のまま、遼太郎の背後まで歩み寄る……。
「……!?」
遼太郎がただならぬ気配に気がついたとき……、その背中に刃物が突き立てられていた。
熱を帯びた鋭い痛みに貫かれながら、遼太郎が振り向くと、そこには悪魔のような形相の陽菜が立っていた。
「……遼ちゃん……っ!!」
みのりの悲痛な叫び声が、アパートの暗い部屋に響き渡り、遼太郎は飛び起きた。
「遼ちゃん!遼ちゃん……!!」
ベッドの上で叫び続けるみのりを覗き込むと、涙で頬を濡らし、うなされている。
「先生っ?!どうしたんですか?」
遼太郎に声をかけられて、みのりはハッとして目を覚ます。涙が溢れる目で、目の前にいる遼太郎を見上げると、とっさに体を跳ね上がらせた。
「遼ちゃん!?……背中は?!」
「背中?」
みのりが泣いている理由が分からず、遼太郎も不安そうに訊きなおす。
みのりが遼太郎の背中を確かめると、そこはたくましい筋肉の丘があるばかりで、ナイフも刺さってなければ血も流れていなかった。