Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「先生……。」
遼太郎はその震えを押し込めるように、抱きしめる腕に力を込めて、みのりを懐深くに抱きしめ直した。
この人を守らなければ……。遼太郎は、切実にそう思った。
こんなにも、自分のことを心配してくれるみのり。その中にある不安を取り除いてあげなければ、今度はみのりの心が壊れてしまうと思った。
「長谷川は、あれからずっと大学には来ていないみたいです。」
そう言って、とりあえずみのりをなだめてみても、根本的な問題が解決されるわけではない。
――このままじゃ、ダメだ。長谷川と決着をつけなきゃ……!
遼太郎はみのりを抱きしめながら、覚悟を決めた。
「長谷川に会ってくるよ。」
金曜日の講義が終わったとき、樫原がトイレに行っているわずかな間を見計らって、遼太郎が佐山にその覚悟を打ち明けた。
陽菜が大学へ来ることを待って、話をつけようと思っていたけれど、いっこうに来る気配がないので、しょうがなくその手段に出ることにしたのだ。
「……え!?」
佐山が驚いた顔をして、遼太郎の顔を凝視する。あんなことをされた陽菜には、もう二度と会いたくないと思うのが普通だ。
遼太郎も本心を言えば、一刻も早くみのりの待つアパートへ帰りたかった。