Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
でも、もうあれから一週間が経ち、みのりも明日には帰る予定にしている。その前になんとか、みのりを安心させられる材料を得たいと思っていた。
「あの子、また刃物を持ち出さなきゃ、いいけどな。……俺、一緒に行こうか?」
心配した佐山が、そう言ってくれる。遼太郎は佐山に迷惑をかけたくないと、首を横に振りかけたが、陽菜の家を知ってるのは佐山だけだった。
佐山と二人で電車に揺られて、毎日陽菜が大学へ通っている道を辿る。
陽菜の家にまで押しかけていくのは憚られたので、電車に乗る前にLINEで、近所のファミレスに行くことを伝えておく。〝何か〟あったときのために、出来るだけ人目の多い所の方がいい、と言う佐山のアドバイスだった。すると、遼太郎が送ったメッセージには、すぐに〝既読〟が付いた。
指定していたファミレスに着くと、昼下がりの人もまばらな店内に、すでに陽菜の背中が見えた。
「…俺、陽菜ちゃんから見えないこの辺にいるから。」
佐山から耳打ちされて、遼太郎はうなずくと、覚悟を決めて陽菜のいるテーブルへと向かう。
遼太郎が突然視界に入ってきて、向かいのソファー席に腰かけると、陽菜はビクリと反応してその体を固くした。テーブルの上にある氷の入ったグラスが、飲み干されているところを見ると、ずいぶん前から待っていたみたいだ。