Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



――……この人を、愛している……。


 しみじみと見つめながら、心からそう思った。他のことが何も考えられなくなるほど、他のことすべてを犠牲にできるほどに、遼太郎のことを愛している。

 遼太郎も、みのりを『愛している』と言ってくれた。けれども、生きている時間の長い分、きっと自分の想いの方が大きくて深いと、みのりは思った。


 その想いを『愛している』という言葉にして、遼太郎に伝えたいとは思う。抱かれている最中も、何度も口を衝いて出そうになった。

 でも――、その言葉だけは、どうしても言えなかった。『愛している』という究極の言葉で、遼太郎を縛り付けてしまうのが怖かった。

 今、こんなにも示してくれている遼太郎の愛を、信じていないわけではない。
 でも、生涯を共にすることを、周囲の人々は理解してくれないかもしれない。反対された時には、きっと遼太郎は苦しむだろう。なによりも、こんな十二歳も年上の女ではなく、遼太郎の人生にもっとふさわしい女性が現れて、遼太郎の心がその人に傾いてしまうかもしれない。

 そうなった時に、遼太郎がいつでも自由に旅立てるように、縛り付けることだけはしたくなかった。
 それは、遼太郎と想いが通じ合った瞬間から、想いを確かめ合った今まで、少しも変わらないみのりの愛のかたちでもあり、信念のようなものだった。


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