Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
一機の飛行機がゆっくりと動き始める。きっとあの飛行機に、みのりが乗っているはずだ。遼太郎がジッと食い入るように見つめていると、それは滑走路へと向かい、方向転換する。そして、一気に加速し始めてスピードに乗り……ふわりと宙に浮いた。
どんどん高く揚がって、遼太郎から遠ざかっていく。
だけど、遼太郎は心穏やかにそれを見守った。たしかに離れ離れになる切なさはあるけれど、あの春の日の別れのように、もう二度と会えないかもしれない別れではない。それぞれが今いるべき場所でやるべきことをやって、また二人が会える時間を作るために必要な別れだ。
飛行機が小さくなって青い空に溶けていくまで、遼太郎は飛行機を見つめ続けた。そこには、秋の澄み切った空が広がっている。
みのりへの〝想い〟を自覚した日。芳野高校の校舎から、二人で見上げた空を思い出した。
『こんなきれいな空を見ていると、心まで澄んでくるね。』
あの時、みのりが言った言葉が、遼太郎の胸に響いてくる。
本当にその通りだと思った。この澄み切った心で想うのは、みのりのことだけ。
二人でこれから歩んでいこうとしている場所も、きっとこの空のように明るく広く拓けているに違いない――。
きっとそこには、〝幸せ〟と呼べるものがあるに違いないと、遼太郎は信じて疑わなかった。