Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
芳野高校の渡り廊下の犬走は、誰にも内緒にしているけれど、みのりにとって特別な場所。そこから、みのりが見上げた空は明るいけれど白く、粉雪が落ちてきていた。
寒さでかじかむ手に息を吹きかけて、職員室に足を向けた時、
「みーのーりー、ちゃーん!」
と、名前を呼ばれて立ち止まる。すると案の定、愛が姿を現した。
「私も職員室に行くから、一緒に行こう!」
愛は相変わらずの明るさで、みのりの腕に自分の腕を絡ませて歩き出す。
「職員室に何の用?」
「うん、数学で解らないところがあるから、ちょっと質問に。」
「そう、今日はクリスマスイブなのに、受験生は大変ね。」
「そりゃ、センター試験が迫ってるから、クリスマスどころじゃないし。」
「俊次くんと約束はしてないの?」
「……えっ!?……あ、アイツとは、別に、何も……。」
みのりの何気ない質問に、愛は過剰に反応して顔を赤くする。その様子を見て、みのりはさらに指摘する。
「愛ちゃん、もしかして俊次くんに告白してないの?」
花園予選が終わったら、愛は俊次に告白すると宣言していた。そして、愛のことだから有言実行して、当然うまくいったものとみのりは思い込んでいたのだが、どうやらそうではないようだ。