Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……いや、だって。もしダメだったら立ち直れなくなって、受験勉強どころじゃなくなるでしょ?」
みのりは呆れたような顔をして、愛の顔を見やった。
傍目で見てると、どう見ても俊次も愛のことが気になっているに違いないのに、当人には分からないものなのだろう。これは、俊次の方を刺激して動かしてあげないと、進展しないかもしれない。
「……わ、私のことより、みのりちゃんはどうなの?今日はサンタさんは来る予定なの?」
愛は苦し紛れに、反撃を試みる。すると、みのりは大きな目をくるりと回した。
「私はお寺の娘だから、クリスマスは関係ないの。」
「あ!そんなこと言って、ごまかしてる!」
愛にはそう言われて、みのりはニッコリと笑って応えたが、その言葉の通り〝サンタ〟は来る予定はない。
遼太郎とは、一日に一通ずつメールのやり取りをすることにしているけれども、そのメールの中に帰省についての連絡はまだない。きっと就職活動の準備に追われていて、帰省の日程を決められないでいるのだと思う。
――……でも、大丈夫……。
たとえ今日会えなくても、もしかしてこの冬休みは帰ってこれないとしても、みのりはもう満たされない想いが辛くて泣くことはなかった。