Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
――遼ちゃん……。今ごろ何してるかな……?
車を降り、アパートの階段を上りながら、そんなことを思った。
今日は、メールだけではなく、電話をしてみよう。抱きしめてもらうことはかなわなくても、せめて遼太郎の声だけでも聞きたいと思った。
……と、その時、みのりの足が止まった。みのりの部屋の前に、人影が見える。あの立ち姿は……。
「……遼ちゃん?」
〝会いたい〟という強すぎる想いと、この粉雪が見せてくれている幻想だと思った。でも、幻想でもよかった。たとえ幻想でも、遼太郎が優しく笑いかけてくれたなら、それだけでもう今日は、満たされて眠りに就くことができる……。
「先生。……待ちくたびれました。」
「え……!」
ところが、その〝幻想〟はみのりに視線を合わせて、言葉を発した。唇だけではなく全身を細かく震わせて、寒さに凍えている。
「本当に、遼ちゃん!?どうして?連絡くれてた?」
焦った様子で、みのりは遼太郎へと駆け寄った。すると遼太郎は震えながらも、みのりがいつも思い浮かべるものと同じ微笑みを見せてくれる。
「先生をビックリさせようと思って、言わなかったんです。空港から直接来たんですけど、先生がこんなに遅くなるなんて思ってなくて……。」