Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎の言葉を物語るように、帰省のための大きなリュックサックが足元に置かれている。
状況を把握して、みのりは言葉を失った。言葉の代わりに体が勝手に動いて、遼太郎の胸に飛び込むと、背中に腕を回してギュッと抱きしめた。
驚きと嬉しさと、それだけでは説明のつかない感情が入り混じって、みのりの瞳に涙が浮かんだ。
「……ビックリ、した……!」
見慣れたモッズコートの胸に顔をうずめて、やっと言葉を絞り出した。
「……ああ、先生って、あったかいな……。」
遼太郎もみのりの髪に唇を付けて、しみじみと目を閉じる。
「今日はやっぱり、先生と一緒にいたいと思って……。」
「……うん。」
みのりは胸がいっぱいになって、涙を溢れさせた。自分がどれだけ遼太郎に会いたかったか、思い知る。今のみのりが、一番欲しかったプレゼントだった。
「そうだ、先生これ。ここに来る途中で買ったケーキとフライドチキンなんです。」
遼太郎が抱きしめ返してくれないと思ったら、両手にはそれぞれ違う箱が携えられていた。
「……ありがとう。これで、〝お祝い〟できるね。」
みのりは涙の残る瞳に可憐な笑みを湛えて遼太郎を見上げ、その片手からケーキの箱を受け取った。