Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「今度、春休みに練習試合をすることになったよ。」
江口がそう口を開くと、みのりは思わず「ラグビーの?」と訊きそうになったが、江口が言うのだからラグビーの試合に違いない。
「そうですか…。」
と、みのりは生返事のような相づちを打つ。
今まで自分が足繁くラグビーの試合の応援に行っていたのは、ひとえにラグビーをする遼太郎が見たかったからだと、今更ながらに自覚した。
でも、もう遼太郎は卒業してしまった。グラウンドを駆け回るあの凛々しい遼太郎をもう見ることはできない。
「今の部員だけじゃ足りないから、卒業生も駆り出してね。」
江口のその一言は、パチンとみのりの目の前で弾けた。その瞬間みのりの頭の中は、仕事中は意識的に追い出していたはずの遼太郎のことでいっぱいになる。
「…卒業生も?」
「うん、二俣や狩野も動員するつもりなんだけど、ポジションはちょっと変えて…。」
「……?」
何故ポジションを変えなければならないのだろう……。みのりが首をかしげると、江口はその疑問に答えた。
「ナンバー8もスタンドオフも、新しくそのポジションに着ける2年にさせたいからね。」
なるほどその通りだと、みのりも思った。もう10番を背負う遼太郎を見られないと思うと寂しかったけれど、またラグビーをする遼太郎を見られることに、みのりの心は喜びで沸き立った。