Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「…そうかもしれないけど…。」


 みのりは写真の中の荘野を見つめながら、声を詰まらせた。
 そんなみのりを目の前にして、遼太郎の胸は、キリキリと痛み始める。


「荘野くんだって、1年前に入学してきた時は、希望でいっぱいだったはずなのに…。そうやって入ってきた子を一旦預かったら、遼ちゃんが卒業していったみたいに送り出してあげるのが、教師の務めなのに…。」


 みのりがそう言って目を閉じた瞬間、涙がこぼれ落ちた。その涙に、遼太郎の体は無意識に反応する。
 気づいたらみのりの背後からそっと、抱きしめていた。

 みのりの涙が落ち着くまで、遼太郎はしばらくそのまま、優しく抱きしめていたいと思っていたが、そんな思いとは裏腹に、自分の中の想いの高ぶりに任せて、その腕に力がこもった。


 みのりの涙を見ると、遼太郎はたまらなくなる。抱きたいとか、そういう欲求以前に、みのりの傍にいて守らなければ…という焦燥に駆られて、居ても立ってもいられない気持ちになる。


「…遼ちゃん…?」


 状況に気づいたみのりが、戸惑いながら声を掛ける。部室の中では二人きりとはいえ、こんなところを他の誰かに見られないとも限らない。

 けれども遼太郎に、その腕の力を弱める気配はなかった。


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