Dear…
まだ夜が明けたばかりの、海岸沿いの道を歩きだす。
そろそろ開店の準備を手伝う時間だ。
身よりのない私を引き取って、養ってくれている本屋のマークスにせめてものお礼のつもりで毎日手伝わせてもらっている。

‐マークス叔父さん…‐

ふと脳裏に優しげなマークスの皺だらけの顔が浮かぶ。

‐こんな私を引き取って、良いことなんてないでしょうに。‐

その存在を隠すように包帯が巻かれた自分の両腕を見る。
これは、海の神に逆らった罰なのだと、この街の神父が言った。
罪深い両親と共に、海へと還らなかった故の報いなのだと。
しかし、私は両親が犯した罪が何なのかを知らない。
マークスも誰も私に教えてはくれなかった。
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