Dear…
急いでマークスが待つ小さな書店にたどり着いたときには、もう完全に陽が登りきってしまっていた。
全速力で走って来たせいか、自らの額にじんわりと汗が滲んでいるのが分かる。
肩で息をしながら、ふと視線を上げると、一人の少年が店の入り口に立ち尽くしている。
海風に靡く、美しい銀灰色の髪。
伏せられた瞼を縁取る、髪と同じ銀灰色の長い睫。
その下で、僅かに愁いを帯びた、グラスグリーンの瞳。
感動のあまり、彼の全てに溜め息をつきそうな自分がいる。
「あの…如何されましたか?」
我に返って、この少年は何か店に用があるのではないか、という考えに至る。
戸惑いながらも、声を掛けると、少年はその瞳をしっかりと開いて、こちらを向いた。
そのあまりに真っ直ぐな視線と、日の光を反射し輝く瞳に、もう一度見とれてしまいそうになる。