Dear…
シュウはため息混じりにそう言った。

「情け…な…い…よな…」

本当に情けない。
あれほど愛した彼女との別れがあまりにも呆気なすぎて、情けないことに俺は泣いていた。

「あなた、大切な方がおられるように見えます」

俺の額に温かい手が当てられたのが分かる。

「最期に手紙など書いてお贈りになっては如何でしょう?」

シュウの言葉に俺の喉から乾いた笑い声が漏れた。

「て…がみ…どう…やっ…て?」

そう、どうやって書けというのだろう。
この動かないからだで。
喋るのがやっとだというのに。

「簡単なことです。あなたはその方への思いを頭の中に浮かべて下さるだけでよろしいのです。」

シュウの言葉が聴こえるだけで、俺の視界はもう真っ暗だった。
目を閉じているのか開いているのか分からない状況の中で、俺は彼女の事を思った。
そして、彼女の幸せを願った。
自分が消えていくのが分かる
崩れていくのが分かる。
とても恐ろしい感覚。
それでも。
それでも俺は彼女の事を思った。

「宛名は如何しましょう?」

聴こえてきたシュウの声に俺は必死に唇を動かした。

「ご注文承りました。」

遠くで小さく、そう言う声がした。
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