Dear…
匂いを辿って出くわす「最期」は全てが生易しいものでは無かったけれど、その匂いに、空気に異常なまでに惹かれていく。
幾度かの「最期」を見送った時に、いつの間にか自分の名前を思い出せなくなっていた。
そんな自分に、随分と前のお客が名前をくれた。

「最期の匂いに魅せられた人。長い人生を区切れ良く終わらせてくれる人。」

今でもあながち間違ってはいないと思う。
シュウは「終わり」の終。
とても自分に合った名前だと思った。

確か、そのお客は歌うのが好きだった気がする。
さっきのお客の「大切な人」も歌うのが好きだったようだ。
嗚呼、そういえば絆も歌うのが好きだ。
歌う事に自由を見いだす人間は、だいたいが何かしらの柵から解放されたがっていた気がする。

ケージの中の金糸雀。

記憶の中で、ゆっくりと3人の姿を重ねた。
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