ぼくのことだけ見てなよ
「ねぇ、これピーマンの肉詰めだよね?」
「そうだけど」
「だよねー。俺、ピーマン食えない。確か、楓もダメだったよな?」
「うん、ピーマンはダメ」

二人してピーマン食べれないとか!ちょっとおかしくて、ぷっと吹き出すと那津以外の二人が、わたしをジッと見ていた。

「な、なに」
「あー、ごめんごめん!椿姫ちゃん、はじめて笑ったなと思って!」
「なっ、」
「及川って、笑うんだね」
「ぷっ、あはは!」

このやり取りに笑ったのは、那津。そんな那津を軽く睨みつけると「ごめんー!」と言いながらも、笑っていた。

「二人とも、椿姫ちゃんのことなんだと思ってるの?椿姫ちゃんだって、人間!頑張って生きてるんだよー!」

那津…。まぁ、確かに頑張っては生きてるけども!

「でも椿姫ちゃんさえいいなら、二人とも肉詰め食べてみたら?」
「えー、ヤダよー!」
「同じく」
「わたしもピーマン苦手だったんだけど、椿姫ちゃんのだけは食べれるんだよ!」

そうだった。最初は那津も、わたしのお弁当の中にピーマンが入ってるだけで、イヤな顔してたっけ。

でも、わたしが作った肉詰めを食べさせてみたら「美味しい!」って、食べてくれたんだよね。あれは、嬉しかったなぁ。

「どうする?楓」
「ぼくは、いい」
「美味しいんだけどなぁ」
「じゃあ、那津食べる?」
「うんっ!わぁい、椿姫ちゃんの肉詰め〜!」

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