ぼくのことだけ見てなよ
ココロん中は、ぐしゃぐしゃだったけど差し出されたノートに書いてる問題に目を通した。

あー、またワケわかんない問題。なにこれ。こんなの解けるわけないじゃん!

……だけど、さっきみたいに考えたらどうなんだろう。なにか、どこかを隠したら、わたしが今まで勉強してきた基礎部分が出てくるんじゃないかな…。

なんて、思いながら。よーく、問題を見た。ん?あれ、これって…。そう思ってからは、早かった。

「美島…」
「んー?お、解けたんでしょ。やればできるんだよ、及川はさ」
「………」

表情(かお)には出さないけど、すごく嬉しかった。〝やればできる〟って言われたことが、とてつもなく嬉しい。

「椿姫ちゃん、お待たせ!……って、わたし邪魔だったかな?」

そんな思いに浸っていると、那津がわたしのところへ来てくれた。

「なんで!邪魔は、コイツだし!」
「ちょっと、それはヒドイんじゃない?せっかく、勉強教えてあげたのにさ」
「あ、美島くんに教えてもらってたんだね!美島くん頭いいから、教え方も上手なんじゃない?」

確かに上手だよ。わかりやすかったし。でも〝うん!上手だったよ!〟なんて、わたしが言えるわけもなく…。

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