ぼくのことだけ見てなよ
「美島くん、椿姫ちゃんにはココロ開いてるみたいだし、いいんじゃない?」
「いや、意味わかんないから!わたしべつに好きじゃないし、気になってもないから!」
「素直じゃないなぁ」

素直じゃない、って…。なんでわたしが美島のこと好きにならなきゃいけないのよ。

「椿姫ちゃん、男の子が全員浮気するわけじゃないよ?」
「そんなことない。オトコは浮気するんだよ、ゼッタイ」
「椿姫ちゃん……」
「ごめん、キツく言い過ぎたね」
「ううん、大丈夫だよ?」
「ごめんね…」

那津の言うとおり、全員浮気なんてしないかもしれない。でも、やっぱり怖いんだよ。恋をするのが…。

「じゃあ、またね」
「うん。椿姫ちゃん、気を付けてね?」
「うん、那津もね?」
「うんっ」

那津と笑顔で、コンビニの前で別れる。まっすぐ帰宅して、部屋の中に入ると淳平がソファに転がってゲームをしてた。

「おかえり」
「ただいま」
「椿姫、今日テストだったろ?」
「そうだけど?」
「どっか寄ってきたの?」
「あ、うん。クレープ食べてきた」
「へぇ〜。オトコと?」
「っ、ゴホッ、ゲホッ…!」

急に淳平が変なこと言うから、むせちゃったじゃない!咳き込みながらも、ギロリと睨みつける。

「なんだよ〜。睨むことないだろ?あ、美島兄貴と一緒だったんだろ?」
「はっ?な、なんでよ…」
「だってこないだ椿姫の口から、オトコの名前久しぶりに聞いたし。オトコか聞いたら、咳き込むし。そりゃー、もう美島兄貴しかいないだろ」
「うっ……」

確かにオトコの名前を出したのは、美島が久しぶりだったかもしれないけど…。

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