あの日のきみを今も憶えている
まさか。

過去形、だった?
想いは成長するの?
私の想いは、姿を変えた?

見てるだけで良かったはずの想いが、変わったの?

まさかそんな。でも。


ざあっと、記憶が巻き戻る。

触れることも笑い合うこともなかった。
遠くから見てた。

だけど、目を見て話して、笑い合って。
触れて。

私は、観覧者から、出演者に、変わった?


「近づきすぎたの……? 私、園田くんに」


茫然とした私に、美月ちゃんが首を横に振る。


「ヒィのあーくんへの想いは、あの絵から溢れてた。こんなことがなくってもきっと、勝手に成長してたよ」

「そん、な……こと。そんなことない! だって、私今でも思うもん。園田くんの横にいるのはミィじゃないと、って! だから、違う。ミィの思い過ごしだよ!」

「思い過ごしじゃないよ。それに、いつか絶対にそう思うはずなんだ。だって、あたしがそうだったから。人を想う気持ちは、あたしも、ヒィも一緒だよ」


美月ちゃんの瞳に新しい涙が湧いた。


「ヒィが自分の想いを見ようとしなかったのは、あたしのせいだね。あたしが、ヒィに我慢させてた。それは、事実だよ」

「やめて! 本当に、我慢だなんて思わなかった。私は今でも、園田くんが幸せならそれでいいの! 園田くんが笑ってれば、それ、で」


私は、言葉を止めた。
崩れ落ちるように、美月ちゃんが倒れた。


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