あの日のきみを今も憶えている
「多分、美月ちゃんは私に同情してくれてるんだと思う。それで、今回の企画なの」


園田くんに少しも違和感を与えたくなくて、俯いたまま言う。


「そんなこと、ねーだろ。でも、それなら納得」


ポン、と頭に手が乗る感覚があって、顔を上げる。


「俺だって、そんな話を聞いたらめっちゃ張り切るもんな」


園田くんが、笑っていた。


「全力で、一生忘れられない思い出刻んでやる。美月の気持ち、すげえ分かる。ていうか、ヒィは夏の思い出がないなんて悲しい事言うな」


園田くんが、私の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「俺も、気合入れるわ」

「わ、わあ! もう、髪が乱れちゃうじゃん!」


ぷう、とほっぺたを膨らませてみせて、その胸の中でもやもやが広がっていく自分。
嘘が通ってほっとしていて、そして、騙した罪悪感。


「夏休みが終わってもしばらくは暑いし、まだ夏っていえる。どっか行きたいなら、みんなで行こう。海にする? プールがいいか?」


ニコニコと笑う顔に、泣きそうになる。

私は、なんて弱いんだろう。
もう、仮面が剥がれそうになる。

だけど、美月ちゃんの寝顔をみて、気を奮い立たせる。


「いや、キャンプだけでいい。あんまり色々経験すると、知恵熱出ちゃいそうだもん」


へらりと笑うと、園田くんも笑う。


「ヒィはホントにインドアだな」

「ええ? こういうのもインドアって言うの?」


嫌われてもいい。恨まれてもいい。
きっといつか、園田くんは分かってくれる。
彼女の選択が、どうしようもなかったことを。

私は、必死に笑顔を張り付けた。


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