あの日のきみを今も憶えている
「そうなの。なんか、あれもしたいこれもしたいって思ったら、バッグが膨らんじゃって」
「いや、俺もわかるんだけどね。なんだかんだで、すっげえ張り切っっちゃったし、俺」
穂積くんが「見て」と自分の肩にかけていたバッグを開ける。
ていうか、私のバッグの二倍くらい大きいですけど……。
そうして中身を見せられる。
「……は? 水鉄砲?」
中には、やたらかさばる大きな水鉄砲が三丁も収まっていた。
「そう! いいだろー」
「う、うん」
満足そうな穂積くんに曖昧に笑った。
あれ? この人、本気で張り切ってる?
いや、それはいいことではあるんだけど。
「さ、いこっか!」
私たちはバスに乗り込み、山のふもとにあるキャンプ場まで向かったのだった。
夏の終わりではあるものの、キャンプ場は大盛況で、駐車場はいっぱい。
たくさんのキャンピングカーが泊まっていた。
人も多くて、バンガローやコテージは満員状態だった。
そんな中、美月ちゃんと慌てて予約したコテージは、思いの外立地のいいところに合った。
キャンプ場の一番端っこの方で、落ち着いた雰囲気。
しかも、建物は綺麗で広かった。
キッチンのみならず、小さなバスルームやトイレも完備されている。
ふおお、なんて素敵な!
完全インドア派女には、ありがたい仕様でございます。
ホント、アウトドアって苦手なんだよね。
「キャンプ場利用者は、この先の池で釣りができるんだってさ。いいな」
「釣り具貸出できます、か。いいな」
「あたしやりたい!」
「ミィがやりたいってさ」
「よし、行くか!」
四人で話しながら、緑に溢れたキャンプ場を歩く。
茂った葉の隙間から零れ落ちる日差しはキラキラとしていて、私たちの足元で揺れた。
「山の方だからかな、涼しいよな」
「ああ、風が気持ちいい」
四人で歩いているというだけで、気分が上がっていく。
知らず、笑顔が絶えなくなっていた。
池の傍の小屋で釣り具を借り受ける。
釣りというとうねうねした虫とか触らなくてはいけないのだろうか、と少し構えていた私だったが、渡されたのはやけにピカピカしたゴム製の魚だった。
「なに? これ」
「ルアー。バス釣りなんだってさ」
「バス釣りってなに?」
私の横にいる穂積くんに訊く。
「えっと、ブラックバスって、聴いたことない? あ、ほら、あれ」
穂積くんが、近くで釣りをしていた男の子を指差す。
丁度釣り上げたところだったらしい、ぴちぴちと跳ねる大きな魚が見えた。
「あ! 見たことある。あんまし美味しくないという話の魚だよね」
「そうだね、ブラックバスは食べないなあ」
「食べない魚をどうするの」
「うーん、釣るという行為が、楽しいっていうかメインっていうか。
ブラックバスは本来外来魚で、生態系を乱すからよくなくて」
「ふう、ん?」
よくわからなくて首を傾げていると、穂積くんが笑った。
「とにかく、今はいちばんでかいのを釣ったやつが勝ちってことかな」
「おお。わかりやすい」
それから、私たちは三人並んで釣り糸を垂らした。
「いや、俺もわかるんだけどね。なんだかんだで、すっげえ張り切っっちゃったし、俺」
穂積くんが「見て」と自分の肩にかけていたバッグを開ける。
ていうか、私のバッグの二倍くらい大きいですけど……。
そうして中身を見せられる。
「……は? 水鉄砲?」
中には、やたらかさばる大きな水鉄砲が三丁も収まっていた。
「そう! いいだろー」
「う、うん」
満足そうな穂積くんに曖昧に笑った。
あれ? この人、本気で張り切ってる?
いや、それはいいことではあるんだけど。
「さ、いこっか!」
私たちはバスに乗り込み、山のふもとにあるキャンプ場まで向かったのだった。
夏の終わりではあるものの、キャンプ場は大盛況で、駐車場はいっぱい。
たくさんのキャンピングカーが泊まっていた。
人も多くて、バンガローやコテージは満員状態だった。
そんな中、美月ちゃんと慌てて予約したコテージは、思いの外立地のいいところに合った。
キャンプ場の一番端っこの方で、落ち着いた雰囲気。
しかも、建物は綺麗で広かった。
キッチンのみならず、小さなバスルームやトイレも完備されている。
ふおお、なんて素敵な!
完全インドア派女には、ありがたい仕様でございます。
ホント、アウトドアって苦手なんだよね。
「キャンプ場利用者は、この先の池で釣りができるんだってさ。いいな」
「釣り具貸出できます、か。いいな」
「あたしやりたい!」
「ミィがやりたいってさ」
「よし、行くか!」
四人で話しながら、緑に溢れたキャンプ場を歩く。
茂った葉の隙間から零れ落ちる日差しはキラキラとしていて、私たちの足元で揺れた。
「山の方だからかな、涼しいよな」
「ああ、風が気持ちいい」
四人で歩いているというだけで、気分が上がっていく。
知らず、笑顔が絶えなくなっていた。
池の傍の小屋で釣り具を借り受ける。
釣りというとうねうねした虫とか触らなくてはいけないのだろうか、と少し構えていた私だったが、渡されたのはやけにピカピカしたゴム製の魚だった。
「なに? これ」
「ルアー。バス釣りなんだってさ」
「バス釣りってなに?」
私の横にいる穂積くんに訊く。
「えっと、ブラックバスって、聴いたことない? あ、ほら、あれ」
穂積くんが、近くで釣りをしていた男の子を指差す。
丁度釣り上げたところだったらしい、ぴちぴちと跳ねる大きな魚が見えた。
「あ! 見たことある。あんまし美味しくないという話の魚だよね」
「そうだね、ブラックバスは食べないなあ」
「食べない魚をどうするの」
「うーん、釣るという行為が、楽しいっていうかメインっていうか。
ブラックバスは本来外来魚で、生態系を乱すからよくなくて」
「ふう、ん?」
よくわからなくて首を傾げていると、穂積くんが笑った。
「とにかく、今はいちばんでかいのを釣ったやつが勝ちってことかな」
「おお。わかりやすい」
それから、私たちは三人並んで釣り糸を垂らした。