あの日のきみを今も憶えている
釣りの後は、コテージに戻ってお昼ご飯を作る、
園田くんと穂積くんが二人で焼きそばを作ってくれた。


「うわ。手つき怖っ」

「手! 気を付けて!」


この間のお弁当作り、園田くんのお母さんはとっても疲れたんじゃないだろうか。
二人とも、手つきがめちゃくちゃ危ういのだ。

私と美月ちゃんはハラハラしながらその様子を見て、最後は園田くんに「黙って見てろ!」と怒られた。


「母ちゃんみたいなこと言ってるぞ、ヒィたちは!」

「だって、怖いんだもん!」


ぎゃあぎゃあと言いながらでき上がった焼きそばは、しかし美味しかった。


「人参が拍子木切りになってるけど、玉ねぎが半生だけど、美味しいよ!」

「ヒィちゃん、けっこう突っ込んでくるねー」


お腹いっぱい食べた頃、美月ちゃんが少しだけ眠りに落ちた。
とても楽しそうに微笑んでいる寝顔を見ていると、嬉しくなる。


そして、もしかしたら49日なんていうタイムリミットはなくて、
明日も明後日も、こんな風に四人で笑いながら過ごせるんじゃないかなんて、思ってしまう。
もしかしたら、ずっと。
四人で、いつまでも。


「食後は、腹ごなしがてらアスレチックエリアに行ってみるか」

「いいね。どっちが先にゴールできるか競争な」

「この、超難関コース行こうぜ」


がちがちの体育会系二人は、コテージに置かれていたアスレチックコース全景の紙を見ながら張り切っている。

えっと、私、小学生のんびりコースでお願いします。


そして、私が小学生や幼稚園児に混じって大きな網にぶら下がっている間に、二人は本当に超難関コースをクリアしていた。
しかもそのコースの最短記録を二人で更新したらしく、記念品まで貰う始末。
すごいな、クリ高陸上部。

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