あの日のきみを今も憶えている
*
美月ちゃんがいなくなってから、一年が過ぎようとしていた。
校舎の窓から見える桜は落葉し、冬を超え、薄桃色の花を開かせ、散らせた。
今は青々とした葉を茂らせている。
窓際の席に座った私は、その葉をぼんやり眺めていた。
「福原ぁ! お前、最高賞だぞ! やったぞ!」
現在、数学の授業中である。
しかしそんなことお構いなしに飛び込んできた杉田先生は、私を見つけるなり、抱きしめてきた。
「ふ、ふお! な、なんですか杉田先生!」
「やったぞ、お前、内閣総理大臣賞だぞ。我が高初の快挙だ。やったぞ、おめでとう!」
「は……? それ、『こうこうび』の?」
二年生の夏の終わりから、集中して描いた絵。
それが、受賞した?
茫然とした私に、杉田先生が頬ずりする。
「ああ。そうだ! ほら、喜びあおうじゃねえか!」
「ぎゃ! 止めて! 痛いキモイ! このセクハラ教師!」
大暴れする私を抱きしめて、杉田先生は歓喜の声を上げる。
「ちょっと、離してってば!」
「ああ、教師冥利ってこのことだな。すげえ嬉しい。俺に喜びを与えてくれたお前をこれからミューズと呼ぼう!」
「呼ぶな!」
「あ、あの。杉田先生? 今授業中でして」
「いやこれは失敬! しかし、俺のミューズの快挙です! 許して下さい!」
そんな騒ぎのせいで、私が『こうこうび』という美術展で開校以来初の快挙を成し遂げたという話は、一気に校内中に広まったのだった。
美月ちゃんがいなくなってから、一年が過ぎようとしていた。
校舎の窓から見える桜は落葉し、冬を超え、薄桃色の花を開かせ、散らせた。
今は青々とした葉を茂らせている。
窓際の席に座った私は、その葉をぼんやり眺めていた。
「福原ぁ! お前、最高賞だぞ! やったぞ!」
現在、数学の授業中である。
しかしそんなことお構いなしに飛び込んできた杉田先生は、私を見つけるなり、抱きしめてきた。
「ふ、ふお! な、なんですか杉田先生!」
「やったぞ、お前、内閣総理大臣賞だぞ。我が高初の快挙だ。やったぞ、おめでとう!」
「は……? それ、『こうこうび』の?」
二年生の夏の終わりから、集中して描いた絵。
それが、受賞した?
茫然とした私に、杉田先生が頬ずりする。
「ああ。そうだ! ほら、喜びあおうじゃねえか!」
「ぎゃ! 止めて! 痛いキモイ! このセクハラ教師!」
大暴れする私を抱きしめて、杉田先生は歓喜の声を上げる。
「ちょっと、離してってば!」
「ああ、教師冥利ってこのことだな。すげえ嬉しい。俺に喜びを与えてくれたお前をこれからミューズと呼ぼう!」
「呼ぶな!」
「あ、あの。杉田先生? 今授業中でして」
「いやこれは失敬! しかし、俺のミューズの快挙です! 許して下さい!」
そんな騒ぎのせいで、私が『こうこうび』という美術展で開校以来初の快挙を成し遂げたという話は、一気に校内中に広まったのだった。