あの日のきみを今も憶えている


話は、一週間前の苑水公園に戻る。

美月ちゃんと園田くんの二人が落ち着く頃には、公園内の照明に明かりが灯っていた。
ウォーキングやランニングの人の姿も減り、気づけば私たちだけ。
それでも、人目を気にして場所を公園内の東屋に移した私たちは、夜遅くまで話をした。

話のメインは、今後の美月ちゃんについて、ということだ。


「実はあたし、あーくんに気付いてもらえたら成仏するんじゃないかなって思ってたんだよねえ」


涙で少し赤く染まった顔で、腕を組んで考える仕草をした美月ちゃんが言う。


「あーくんがあたしの存在に気付いてくれて、お別れをきちんと言えたらもういいって思ってたんだ。なのに、成仏できなかったね」

「俺はそんなの嫌だ! まだ、美月にいて欲しい!」


美月ちゃんの言葉に、そう叫ぶのは園田くんだ。
彼は、再び巡り会えた彼女をすぐに喪うのは耐えられないと言った。

それは、そうだろう。
お別れの挨拶がきちんと済んだらそれでいい、なんて訳がない。


「でも……あたし、死んじゃってるんだよ。ずっとヒィの傍にいるわけにはいかないよ」

「俺のところに来い! それでいいだろ」

「そんなの、やり方が分かんないよ。どうしてヒィだけがあたしのこと見えるのかも分かんないし、ヒィの傍から離れられない理由も分かんないんだよ?」


ぐっと園田くんが息を飲む。
それから、絞り出すように、「なんで自分の元じゃなくて福原さんなんだ」と言った。


「何でだよ。俺だったら……福原さんじゃなくて俺だったら! 何で全然関係のないこの子なんだよ!」

「園田、くん……」

「あー、くん……」


悲痛な園田くんの声に、美月ちゃんが俯いた。
私も、言葉を失う。


「あたしだって……できるなら、そうしたかったよ……」


美月ちゃんの小さな呟きを、私は園田くんに伝えることはできなかった。
誰よりも、園田くんの前に現れたかったのは、美月ちゃんだ。
他の誰の前でもなく、園田くんにこそ、見つけて欲しかっただろうに……。

私の前じゃなくてよかったのにというのは、美月ちゃんだってきっと思っただろう。


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