友達

「その男は、キミを大切にしてるとは言えないな」
「友達なんです」
「友達?」
「はい。友達」
小宮さんは、呆れたように、ため息をついた。
「青谷くん」
いつの間にか、私は小宮さんの腕の中にいる。
「僕なら、キミを大切にできる」
「うそばっかり」
「うそじゃないさ」
「美人でしょ? 私」
「そうだね」
「色っぽいでしょ?」
「確かに」
「カラダだけならそう言ってください。私、構いませんから」
「残念ながら、僕はもうオジンだからね。カラダだけを求めて、満足させる自信はない」
そんな風に、私に言った人は、初めてだった。
「何が欲しいんですか?」
「キミだね」
「カラダでしょ?」
「それも含め、だ」
それ以外に、私に何があるっていうの?
「……好きなんですか?」
「ああ、好きだよ」
「私を?」
「そうだね」
「ほんとは、セックス、嫌いなんです」
「そう、じゃあ、しないでいよう」
小宮さんはそう言って、優しく、ほっぺたに、キスをした。
「キスは好きなの」
「そうか、じゃあ、キスはしよう」
「ワガママなの」
「知ってるさ」
「……愛して欲しいの」
「愛してるさ」
「友達?」
「違うよ、恋人だ」





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