桜の花びらの記憶
「由梨、なんで避けるんだよ」

 ドキドキが収まらない。

 声が出ない。

「俺さ、由梨と前みたいに話しできなくなるの、すげー辛いんだよ」

 私だってそうだ。

 お兄ちゃんとこうやってまた仲良く話ができて、どんなにうれしいか。

 でも、なんでこんなにドキドキするのかわかんないんだよ。

 うまく言葉にできないんだよ。

「俺、なんかしたかなあ?そりゃ、昔はさ、あんなにいつも一緒に遊んでたのに、急に俺バスケに夢中になっちまって、お前の存在なんて忘れちまうほどバスケ一色だったから、嫌われても仕方なかったよ。でも、やっと仲直りできたと思ったのは、俺だけなのか?」

 お兄ちゃん、怒ってるんじゃない。

 悲しそう……?

 パッと顔をあげると、悲しそうな顔が笑顔に変わった。

「やっとこっち向いたな」
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