桜の花びらの記憶
 私がお兄ちゃんの顔を見るだけで、お兄ちゃん喜んでくれるんだ。

 私がお兄ちゃんの顔を見ていないと、あんなに悲しそうな顔をするんだ。

 お兄ちゃんにあんなに悲しそうな顔を、もうしてほしくない。

「ご、ごめんね、お兄ちゃん」

「俺、嫌われたのか?」

 私は思いっきり首をふった。

「俺、そばにいるの迷惑か?」

「そんなことない!」

「電車、一緒に乗るのが嫌なら……」

「いやじゃない!ごめん。また一緒に乗ってほしい」

「ほんとか??」

「うん」

「よかった~。夏休み中一人で満員電車に乗せんの、ほんっと心配だったから。やっと二学期入って守ってやれると思ったのにさ。一緒に行くのが嫌ってんなら、どうやって守ってやればいいのか、ずげー考えたんだぜ。離れて乗るかとか。でも離れて乗ったら痴漢とかにあった時、俺どうやって助けてやれんのかとか、めっちゃ悩んだよ」
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