桜の花びらの記憶
どんなに辛くても、一緒に満員電車に乗るこの時間だけは捨てられなかった。
お兄ちゃんが私のことを妹としてしか思っていない。
それは分かっていても、この時間だけはお兄ちゃんに大事にされていると思った。
お兄ちゃんを一人占め出来た。
そのためになら妹に徹することができた。
私は妹。
お兄ちゃんの妹。
自分に言い聞かせた。
自分の気持ちをお兄ちゃんに知られてはいけない。
知られれば、きっとこの関係が壊れてしまう。
それだけは嫌だった。
二学期も終わり、冬休み。
高三のお兄ちゃんは、毎日補習に自動車の教習所にと忙しそうで、なかなか会えなかった。
それでもきっとクリスマスは、あの彼女と一緒に過ごすんだろう。