桜の花びらの記憶
 大晦日、夜にお兄ちゃんが家に来た。

 十日くらいぶりのお兄ちゃん。

 どうしたんだろうと思ったら、「車の免許が取れたから、一緒に初日の出を見に行かないか」と誘われた。

 お母さんはお兄ちゃんのことは信用しきっているので、快く送り出してくれた。



「お兄ちゃん、なんで私を誘ってくれたの?彼女と一緒に行かないの?」

「今日はお前といたかったんだよ」

 またそんな思わせぶりなことを言う、いつもと少し様子が違うお兄ちゃん。

 車の運転をしているっていうだけで、大人びた感じがする。

 初詣をしようと神社に行って、熱心にお参りをするお兄ちゃんの横顔は真剣だった。
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