桜の花びらの記憶
 私はあまりお兄ちゃんの家に行かなくなった。



 中学生になったある日、学校から帰るとお兄ちゃんの家の桜の木の下で、女の子が待っていた。

 家から出てきたお兄ちゃんは別人のようだった。かっこつけてネックレスなんてしている。

「いこうぜ」

 そう言って女の子の手を握った。

 私は声もかけられず、目も合わせられず、すれ違った。


 
 それからは極力お兄ちゃんを避けた。
 
 お兄ちゃんの家の前は通らないように回り道をした。

 私の知らない人になってしまったようで嫌だった。



 そのお兄ちゃんが今、目の前にいる。
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