溺愛ドクターは恋情を止められない
ふたりの処置が終わると、あんなにバタバタと足音が響き渡っていた救急は、打って変わって静かになった。
「はぁ。朝から大騒動だったな」
「お疲れ様です」
小谷先生が、一旦上がった病棟から戻ってきて、溜息をつく。
「松浦ちゃん、慣れてきたね」
「はい。ありがとうございます」
最初は加賀さんたちの指示に従う事しかできなかったけれど、自分で気がつけることが多くなって、少しだけ貢献できていると思う。
ほんの少し、だけど。
「もー、小谷先生。ちゃんと薬剤名書いてくださいよ。病棟から苦情です」
処置がひと段落しても、ナースはまだまだ仕事がある。
病棟とのやり取りをしたナースが小谷先生に声をかけた。
「あ、忘れてた」
先生達もまた、処置だけでなく、カルテの作成もしなければならない。