溺愛ドクターは恋情を止められない
「小谷先生、早くって病棟が……」
再び病棟から連絡を受けたナースが小谷先生を急かす。
「はいっ! 只今」
歯切れのいい返事をしながらも、溜息をついている。
「私、入力しましょうか?」
「そう? 助かる」
どうやら小谷先生は電子カルテが苦手らしい。
本来はドクターが入力しなければならないものだけど、こうして指示をもらいながらなら、大丈夫。
「この患者は、セファメジンと……」
「この病名では、この薬は通りませんよ」
「あ、そうだった」
ふたりで取り掛かると、溜まっていたカルテもあっという間に打ち込み終わった。
救急は処置をしながら打ち込んでいくことが難しいから、こうしてすぐに溜まってしまう。
「松浦ちゃん、すごいじゃん。俺、専属にならない?」
「いえ、すごい訳ではありません」
医療事務をしている人なら、誰でもできる。