溺愛ドクターは恋情を止められない
偽恋人
それから数日。
相変わらず救急は忙しく、手が空かないドクターやナースの代わりに雑用を頼まれることもしばしばだった。
だけど、その日はとてもうれしいことがあった。
「高原先生だ」
外来の方から走り込んできた男の子が、日直だった高原先生の姿を見つけて駆け込んできたのだ。
「おぉ、清春(きよはる)。元気そうだな」
幼稚園児くらいだろうか。
まだ体の小さい男の子を高原先生は抱き上げた。
まるで、息子のように。
「走れるようになったのか?」
「うん。運動会はビリだったけど……」
口を尖らせる清春君は、それでも笑顔だった。
「そんなの構わないさ。清春が一生懸命走れたなら」
「先生、すみません!」
それから駆け込んできたのは、母親の様だ。