溺愛ドクターは恋情を止められない
結局、その日はさやかちゃん以外は、特に重大な事態に陥ることなく、業務が終了した。
私達受付は、十七時で夜勤専門の男性に代わる。
ナースも引継ぎが始まっている。医師も交代だ。
私達と違って医師の場合、継続して診ている人がいると、そのまま帰れるわけではないようだ。
「お疲れ」
整形外科の二年目の後期研修医、小谷(こたに)先生が入ってくる。
会うのは二度目だった。
彼は研修医の中でも、ムードメーカー的な存在。
髪は短めで、眉は凛々しく、がっちりとしたスポーツマン体型。
きっとモテるに違いないと、ひとめ見て思った。
「あれっ、松浦ちゃん。元気ない?」
「そんなことないです」
精一杯の強がりを言ってみる。
辛いのは家族。
私がここで泣いていたって、なにも変わらない。