溺愛ドクターは恋情を止められない

それは、残酷な現実だった。
命がけで治療をし、やっと戻れたと思ったら居場所がない。そんなのあんまり。


「学校の問題は、残念ながら医者には手が出せない」


それはそうだろう。
だけど、もどかしく思っている先生の気持ちはよく伝わってくる。


「だけど俺は、清春に負けて欲しくないんだ」


ハンドルを握り、前を見据える高原先生の横顔を見て、ハッとした。
もしかしたら彼も、同じような経験があるのかもしれない。


「また、遊びに行けるといいですね」

「そうだな。今日はありがとう」

「いえ……」


本当なら、こうして患者のひとりと特別な行動を共にしてはいけないのだろう。
それでも、清春君のことを深く考え、こうした行動に移す高原先生は、最高に素敵。


「送っていただいて、ありがとうございました」


家まで送ってくれた彼にお礼を言って車を降りようとすると、腕をつかまれ、止められた。
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