溺愛ドクターは恋情を止められない
揺れる心
それからも、高原先生との関係は変わらなかった。
救急で時々顔を合わせ、仕事の会話を交わす日々。
だけど、患者が処置室で亡くなってしまうと、彼は必ず私の様子を見に来て、心配そうに見つめていた。
誰かが亡くなるということに、どうしても慣れることはできない。
それでも仕事を放棄することもできず、必死に感情を隠して働いていた。
「松浦、これ」
処置室から出てきて私にIDを手渡した高原先生は、肩で息をしていた。
長く続いた心臓マッサージ。
それでも残念なことに患者は亡くなった。
「先生、あの……」
「ごめんな。また死なせちまった」
高原先生のせいじゃない。
それでも、そうやって患者や家族の立場になれるのが、彼の優しいところ。