溺愛ドクターは恋情を止められない
「先生の、せいじゃないです……」
「そうだな。ありがとう」
私達はこうして死に向かい合っていくしかない。
先生は、『人の死に慣れる必要はない』『真正面から人の死を受け止めないといけない』と言っていた。
私もそう思う。
だから誰かが亡くなったときは顔をゆがめてもかまわない。
それでも、私達は次の命に向かわなければならない。
「高原、お疲れ」
その時、背中越しに小谷先生の声がした。
「ごめん、邪魔した?」
私達の様子を見ておどけた調子の小谷先生は、一瞬高原先生を鋭い瞳で見つめた。
「いや、IDを渡しただけだ。手伝ってもらって助かった」
交通事故で入ったさっきの患者は骨折も多く、急遽整形から小谷先生にも来てもらっていた。