溺愛ドクターは恋情を止められない
売店に行き、なにか購入しようと思ったけれど、食べる気が起こらない。
患者が亡くなったあとはいつもそう。
これではいけないとわかっていても、体が受け付けない。
結局、自動販売機で甘いコーヒーを買い、ためらいながらももう一本買ってしまった。
そして、向かったのは……。
「お疲れ様でした」
「松浦、か」
中庭に行くと、やっぱり高原先生がいた。
以前、中庭から見上げる空がきれいだと言っていたことを思い出したから。
「よろしければ」
「疲れたときは甘いもん、か」
クスッと笑う先生は、私の手から砂糖のたっぷり入ったコーヒーを受け取ってくれた。
「サンキュ。座るか?」
「はい」
すぐにプルトップに手をかけた先生は、「ホントに甘いなこれ」と言いながらも飲み進む。