溺愛ドクターは恋情を止められない
私も同じようにコーヒーを口にして、空を見上げた。
「空がきれい」
周りは病院の建物で囲まれているけれど、ホッとできる空間が広がっていた。
「だろ? 俺も入院してた頃、なにもやることがなくて、空ばかり眺めてた」
高原先生も同じように空を仰ぐ。
初夏の香りがする空は、高く、濃いブルーをしていた。
「この美しい空の景色に目を奪われながら、その一方でおびえていた」
「えっ?」
どうして?
こんなに美しい光景におびえるって、どういうこと?
空から先生の顔に視線を移すと、俯いた彼は、再びコーヒーを口にする。
そして……。
「いつ、呼ばれるのかって……」
それは……。
「辛い思いをされたんですね」
きっと恐れていたのだ。
死の使者がやって来ることを。