溺愛ドクターは恋情を止められない
心臓の病気がどれほど重かったのかは知らない。
だけど、いつも死と隣り合わせの生活を送っていたのだろう。
だから、高原先生はこんなに必死になって、患者の命をつなぎとめているに違いない。
「そうだな。すごく辛かった。だけど、こうして生かしてもらって……」
そう。きっと手術に耐えるのも、死の足音に怯えながら入院生活を送るのも……幼い子には残酷で、耐えがたいものだったのだろう。
もしかしたら、同じ病室の友達は命を落としたかもしれない。
だけど、彼はこうして生きている。
そして、きっと恩返しをしようとしている。
「私……。母のこともあって、失われていく命にばかり囚われて、忘れていたのかもしれません」
彼は突然口を開いた私を、不思議そうに見つめる。