溺愛ドクターは恋情を止められない
「こうして生きている私達にも使命があって、それをまっとうすべきだって」
たとえ助からなかった命に涙を流しても、そこで立ち止まっていてはいけない。
先生には救える命がある。
だから、生かされたのだろう。
「使命、か」
彼はゴクッとコーヒーを飲み干すと、小さくうなずいた。
「私も、もっと役に立てるように頑張らなくちゃ」
先生達のように直接命を救うことはできないけれど、なにかできるはず。
だから私はここに存在している。
そうやって前向きに考えることは、悪いことじゃない。
「俺も使命をまっとうするかな」
「はい」
立ち上がった彼は、大きな深呼吸をする。
「これ、サンキュ」
そして、コーヒーの空き缶を私に見せて微笑んだ。
「いえ」