溺愛ドクターは恋情を止められない
「やっぱり、疲れたときは甘いもんだな」
「そうですね」
私が笑顔を作ってみせると……。
「それと、松浦のひとことだ」
「えっ……」
彼は私の頭をポンと叩いて、救急の方へと歩いていってしまった。
その後ろ姿がなんだかとても寂しげで、胸が痛む。
それでもきっと、高原先生なら、使命をまっとうするはずだ。
患者が亡くなっても、随分取り乱さなくなった。
それでも笑うことはできない。
きっとそれは高原先生も同じなのだろう。
本当は苦しくてたまらない。
それでも私達は、前に進むしかない。
【松浦、お疲れ】
仕事が終わって病院を出ると、小谷先生からラインのメッセージが入った。
【お疲れ様です。先生はまだ仕事中ですか?】
いつもの会話。
だけど、無性に胸がざわついた。
高原先生を見つめるあの鋭い視線が気になっているからだ。