溺愛ドクターは恋情を止められない
「あぁ、あそこにしよう。俺が気に入っているフレンチレストランなんだけど、夜景がすごくきれいなんだ」
「いえ、そんなすごいところじゃなくても」
近くのファミレスでもよかった。
いや、むしろそうして欲しいくらいだった。
「俺がそういう気分なんだよ」
ちょっと強引なところのある小谷先生は、レストランに向かって車を走らせた。
先生が連れて行ってくれたのは、小高い丘の上にある海に近い素敵なレストラン。
車を降りると、ほんのり潮の香りが鼻をくすぐる。
「ふたりで」
レストランに入ると、彼は緊張している私の手を引いた。
高原先生とは少し違う、関節の太い手。
この手は、高原先生と同じようにいくつもの命を救っている。
だけど、手を握られているのに戸惑うのは、私の気持ちがここにないから。