溺愛ドクターは恋情を止められない
窓際の席に着くと、大きな窓から夜景がきれいに見える。
「松浦の後ろは海なんだ。昼間に来てもきれいだよ」
後ろを振り向いてみたけれど、今は暗くてなにも見えない。
「さて、コースがうまいんだけど、それでいい?」
「はい。お任せします」
本当はゆっくりしたい気分ではなかった。
だけど、言えない。
先生はいくつかの料理をチョイスして注文を済ませると、水に手を伸ばした。
「緊張してる?」
「はい。こういうところ、慣れないですし」
それは嘘ではなかったけれど、緊張の原因はそれだけではない。
「松浦は真面目だな。飯を食うだけだから、緊張なんてするな」
クスクス笑う先生の顔が穏やかで、救われる。
すぐに運ばれてきた前菜は、アボカドとエビの組み合わせ。
ちょっと酸味が利いていて爽やかな味。