溺愛ドクターは恋情を止められない

「でも、眼科の眼注より平気じゃない?」

「眼注……」


レセプトで勉強はしたけれど、見たことはない。
たしか眼球に直接注射することだ。


「そ。こうやって……」


先生が人差し指を私の目に近づけて……。


「無理です。怖い……」

「実は俺も」


彼はクスッと笑うけれど、毎日毎日もっと難しい症例に対峙している。


「でも松浦って面白いな」

「面白い?」


そんな風に言われたのは初めてのこと。


「うん。感受性が強いのかな。表情がクルクル変わる」

「そう、ですか?」


自覚はないけれど……。


「うん。俺に食事に誘われて、困った顔してた」


一瞬、フォークが止まる。
その通り、だけど、まさか気がつかれていたなんて。

気まずくなって俯くと、彼は「ほら、デザート来たぞ」と私に勧める。
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